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「防災」がイマイチ盛り上がらない理由

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東日本大震災の被災地に住んでいます。沿岸部居住ではありませんので、津波はテレビで見ただけ。いうなれば大した被災をしていない方の被災者です。自分も含め2011年の被災当時は防災意識が高く、防災グッズを買い揃えたり、家具を固定したり、懐中電灯を枕元に置いたりしていましたが、最近はもう何事もなかったのかのように警戒が緩んだ生活を送っています。で、先だって年何回か日曜の朝に開催されているという町内会の防災訓練が気になって覗いてみたのですが、もう全然人が来てない。きちんと訓練しているのは年配のみなさんばかり。「あれ、ひょっとして防災って大震災被災地ですらちょっと下火になっている?」と感じた次第です。

大震災に遭っているのに「ま、いっか」ですぞ

あ、私自身は全然「防災しっかりやらなくちゃだめじゃないか!」という人ではありません。やるもやらないもその人次第だと思っているので。ただ、東日本大震災クラスになると、ほんとう国や都道府県、市町村とった公的なお助け(いわゆる公助)は最初のうちはまるで当てになりませんでした。そりゃ行政にしてみれば限られた人的・物的リソースを限らた時間の中で効率的に使おうというのだから、とりあえず命が無事で、雨風しのげる場所があって、最低限の水と食べ物がある人へのサポートは後回しにしようというのは分かります。なので、被災地に住んでいる多くの人がこの「公助という点では放置状態」を体験していたにもかかららず、7年も経つと「ま、いっか」という気になるのだなあという人間心理、これこそが興味深いです。当時は飲み水も満足になかったほどなんですけどねー。

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sasint / Pixabay

「もうあんな地震は来ないのでは」という楽観論

「ま、いっか」という気持ちに立って、防災への取り組みを二の次にしている第一の理由はおそらく「あんなでかい地震と津波はもうこないでしょ」という楽観主義だと思います。確かに、東日本大震災のマグニチュード(M)9級というクラスは日本では起きていません。「あの震災は特別な異常事態だったのだ」と切り分けて考えることで、「あそこまでの備えは要らないのよ」と心の中で理論武装しているのではないかなと勝手に推測してます。

でも、まあ確かにM9は来てないのですが、ざらっと調べて下に並べてみるだけでも結構大型の地震は続いているので、東日本震災だけを特別視することはなかなかに難しいですよね。

発生日 発生場所 M 最大震度
2011年03月11日 三陸沖 9 7
2011年03月12日 長野県・新潟県県境付近 6.7 6強
2011年03月15日 静岡県東部 6.4 6強
2011年04月01日 秋田県内陸北部 5 5強
2011年04月07日 宮城県沖 7.2 6強
2011年04月11日 福島県浜通り 7 6弱
2011年04月12日 福島県中通り 6.4 6弱
2011年04月16日 茨城県南部 5.9 5強
2011年06月30日 長野県中部 5.4 5強
2011年07月31日 福島県沖 6.5 5強
2011年08月19日 福島県沖 6.5 5弱
2011年08月01日 駿河湾 6.2 5弱
2011年11月20日 茨城県北部 5.3 5強
2011年11月21日 広島県北部 5.4 5弱
2011年12月14日 岐阜県美濃東部 5.1 4
2012年12月07日 三陸沖 7.3 5弱
2012年01月28日 山梨県東部・富士五湖 5.4 5弱
2012年03月14日 千葉県東方沖 6.1 5強
2012年03月01日 茨城県沖 5.3 5弱
2012年03月27日 岩手県沖 6.6 5弱
2012年07月10日 長野県北部 5.2 5弱
2012年08月30日 宮城県沖 5.6 5強
2013年10月26日 福島県沖 7.1 4
2013年02月02日 十勝地方南部 6.5 5強
2013年04月13日 淡路島付近 6.3 6弱
2013年04月17日 宮城県沖 5.9 5弱
2013年04月17日 三宅島近海 6.2 5強
2013年08月04日 宮城県沖 6 5強
2013年09月20日 福島県浜通り 5.9 5強
2014年11月22日 長野県北部 6.7 6弱
2014年03月14日 伊予灘 6.2 5強
2014年05月05日 伊豆大島近海 6 5弱
2014年07月05日 岩手県沖 5.9 5弱
2014年07月08日 胆振地方中東部 5.6 5弱
2014年07月12日 福島県沖 7 4
2014年09月16日 茨城県南部 5.6 5弱
2015年05月25日 埼玉県北部 5.5 5弱
2015年05月30日 小笠原諸島西方沖 8.1 5強
2015年07月10日 岩手県内陸北部 5.7 5弱
2015年07月13日 大分県南部 5.7 5強
2015年09月12日 東京湾 5.2 5弱
2016年10月21日 鳥取県中部 6.6 6弱
2016年11月22日 福島県沖 7.4 5弱
2016年12月28日 茨城県北部 6.3 6弱
2016年01月14日 浦河沖 6.7 5弱
2016年4月14日~ 熊本県熊本地方など 7.3 7
2016年05月16日 茨城県南部 5.5 5弱
2016年06月16日 内浦湾 5.3 6弱
2017年10月06日 福島県沖 5.9 5弱
2017年06月25日 長野県南部 5.6 5強
2017年07月11日 鹿児島湾 5.3 5強
2017年07月01日 胆振地方中東部 5.1 5弱
2018年04月09日 島根県西部 6.1 5強
2018年06月18日 大阪府北部 6.1 6弱
2018年09月06日 北海道胆振地方中東部 6.7 7

抜けてる地震があったらごめんなさいね。自分でまとめていても感じますが、結構大きな地震きてますね。しかも被害も大きい。でも、やっぱり防災心理学(災害心理学)でいうところの「正常性バイアス」といいますか、どこか他人事に感じてるわけです。

座る犬

Pexels / Pixabay

備えはしなくちゃいけないけれど、やっぱ「めんどくさい」という心理

ノーベル経済学賞を受賞しているダニエル・カーネマン博士の「ファスト&スロー」を読むと出てくるのですが、人間の脳の働きというのは「ゆっくりだけど理知的な働きをする機能」「すばやいけれど感情的な働きをする機能」の2系統が存在するそうですよ。で、ゆっくり脳はエネルギーを大量に使って深くじっくり正解を探る計算をするのですが、なにかの出来事に遭遇する度にエネルギーを大量消費しているのではあまりに非効率的なので、基本的には経験則に基づいてちゃっちゃか働く「はやい脳」にオペレートを委ねているのだそうです。

「はやい脳」…あー。と納得ですね。

これほど地震が頻発している日本では、地震への備えってむっちゃ大切なんですよね、多分。でも、統計的な確率からいえ、各地震においては「地震に遭う国民より、地震に遭わない国民の方が明らかに多い」ですから「備えない方が効率的」ともいえるわけです。自分の体験からいっても、震災被災直後はエネルギーを総動員して、生き延びるために「ゆっくり脳」が私の行動コントロールしていました。

ところが、やっぱり「ゆっくり脳」はすべての行動が理詰めですから、長く続けるのはしんどかったです。新聞、テレビ、ラジオ、ネットから情報収集して、天気や備蓄品、家族やペットの動向に気を配り、夜寝る時もいつでも逃げられる態勢で靴は枕元におき、通帳やクレジットカード、保険証、現金、連絡先も常に携帯していました。あの時の生活をこれから先も1年、5年、10年と続けていくと思うと正直「ぐええ」となります。

大事なもの

StockSnap / Pixabay

理性と感情のせめぎあいは感情が勝つ!((((;゚Д゚))))

結局のところ、水は低いところに流れるといいますか、理性と感情の勝負になると、人間やっぱり感情には勝てません。「めんどくさい強し」です。とはいえ、エネルギーを無駄に消費しないという生命活動の法則で考えれば「めんどくさい」はそれほど悪ではありません。上下左右前後からいつ危機が襲ってくるか分からない状態はエネルギーを恐ろしく消費します。

しかも神経もすり減るし、それ環境自体が生命にストレスです。「いつ危機がくるか分からない」→「備えるのはしんどい」→「だから備えない」は方程式として不思議はない感じさえします。よく「災害の風化に危機感を抱く」といわれますが、これもこの方程式なら納得ですよね。風化という言葉には「忘れる」という意味も含まれますが「めんどくさいことだからあえて目を背ける」という陰性な働きも潜んでいるのでしょう。

FUN

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防災がめんどくさがられるのを回避する一つのアイディア

めんどくさくてストレスすら感じることもあり得る「防災」ですが、盛り上げていく方法はないものでしょうか。一つ考えられるとすれば、「めんどくさい」ではなく「楽しい」「面白い」ものに切り替えていくのも有効ではないでしょうか。命を守るアクションが楽しい、面白いというのは不謹慎とは思いますが、回り回って命を守ると考えれば、小異は捨ててもいいかなと。

災害サバイバルを題材にした恋愛スマホアプリでもいいですし、町内会の防災訓練もチームごとに特典を競うゲーム方式でもいいでしょう。お利口さんに「防災の勉強しましょう!」ではなく、基本的に「めんどくさがり」である怠惰な人間の本性を取り込んでしまう包容力で、知らぬ間に防災スキルが身についているのは悪くないと感じます。

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