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人工知能の今を少し知ったら逆に人間がすごいなと思える件

先だって、WIREDさん主催の「A.I 2015」(東京・虎ノ門)に参加してきました。AIつまり人工知能のお話です。未来学者レイ・カーツワイルさんによれば、2045年に人工知能は人類の知能を超えるのだそうで、この「特異点シンギュラリティと呼んだターニングポイントまで、あと30年で先端の研究者を招いて、ちょっと語ってみようぜというイベントでした。

汎用型人工知能がくるー

全体のプログラムはこんな感じです。人工知能に関心のある方であれば、「お?この人知ってる」といった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

13:00 ご挨拶若林恵(『WIRED』日本版編集長)
13:05 【開会の辞】「シンギュラリティへといたる道」松田卓也(宇宙物理学者/神戸大学)
13:20 「シェフ・ワトソンと創造性の未来」ラヴ・ヴァーシュニー(イリノイ大学)
14:00 「AI社会の未来図」ベン・ゲーツェル(AI研究者)
14:40 「Windows 10 もっと自然に、人間らしく」三上智子(日本マイクロソフト)
15:00 休憩
15:15 「汎用人工知能はオープン・コミュニティから生まれるか」山川宏(ドワンゴ人工知能研究所)
15:45 「人間のようなAI:本質的危険性と安全性」一杉裕志(産業技術総合研究所 人工知能研究センター)
16:15 「生命科学がAIにもたらすもの」上田泰己(東京大学/理化学研究所)+ 一杉裕志
16:55 「人工知能に“世界”を教える」武田秀樹(UBIC)
17:10休憩13:00 ご挨拶若林恵(『WIRED』日本版編集長)
13:05 【開会の辞】「シンギュラリティへといたる道」松田卓也(宇宙物理学者/神戸大学)
13:20 「シェフ・ワトソンと創造性の未来」ラヴ・ヴァーシュニー(イリノイ大学)
14:00 「AI社会の未来図」ベン・ゲーツェル(AI研究者)
14:40 「Windows 10 もっと自然に、人間らしく」三上智子(日本マイクロソフト)
15:00 休憩
15:15 「汎用人工知能はオープン・
17:25 「日本がAI先進国になるために」井上博雄(経済産業省)+ 松尾豊(東京大学)+ 服部桂(編集者/科学ジャーナリスト)
17:55 「プレ・シンギュラリティの衝撃」齊藤元章(PEZY Computing/ExaScaler)
18:25 「AIの未来についてのいくつかの回答」松田卓也 + ベン・ゲーツェル + 山川宏 + 一杉裕志 + 上田泰己 + 松尾豊 +
齊藤元章 + 若林恵
18:55 ご挨拶若林恵
19:00 懇親会

元々が超文系人間ですので、難しい理系の話になるとチンプンカンプンなのですが、各講演者のざっくりまとめとると「人工知能はもう実現している例もあり、未来の技術ではない」ってことで、「特に人間と同じように幅広く物事に対応できる「汎用人工知能」(artificial general intelligence)が完成すると、人類の社会、産業、環境、軍事が大きく変わるかも知れないよ」ってお話でした。詳しくは人工知能学会のページでもご覧ください)

個人的には、ハード面で人工知能開発を牽引する次世代スパコン開発者の齊藤元章さん猛烈な早口で数字をバンバン羅列していくのがツボでした(笑)。なんでも「10年内の間に6リットルに世界の人口に相当する73億人の人間の脳に匹敵する集積回路を収める」のだそうで、すごいですよね。1リットル牛乳パック6本分に73億人分の脳と同じ知能が収まるんですって。詳しくは齋藤さんの著書『エクサスケールの衝撃』をご覧ください。これ下手なSF小説よりよっぽど面白いです。

逆にすごいぞ人間の脳!

で、結局、人工知能の先端を垣間見て思ったことは逆に人間の脳ってすごいなという点です。もうレベル的に、計算の量や速さではコンピューターにはかないません。でも、彼らが得意なのは人間が組み立てた方程式を解くのが早いということであって、森羅万象あらゆる自然現象の中から、必要な情報をざっくり取り出して方程式自体を組み立てるのは、これだけ技術が進んでもまだ人間の方が得意そうです。

たとえば、北海道から東京まで向かうと仮定した時、飛行機か鉄道か船か、あるいは車か、さまざまな条件から最短であったり最安であったりという複雑なルートを組み合わせるのはコンピューターが無双です。ですが「北海道から東京に行くんだからよ、まずは南に進もうぜ」というざっくり感は人間ならではです。「うん、だいたい合ってるからOK」。ヒューリスティクスといってもいいかもしれません。何をもって「だいたい」なのか、コンピューターはものすごい勢いでその判断基準の構築を追い上げてきてますが、まだ勝てそうです。

スカイツリー

photo credit: DSCF1258 via photopin (license)

 

ターミネーターが登場したら…

しかし、やはり油断は禁物でしょう。心霊写真の元凶とされ、点が三つぐらいあると顔に見えてしまう「シミュラクラ現象」(たとえば顔文字の(^^←こんなのが、記号の固まりではなく、「顔」として認識される現象)も人間固有の脳の働きですが(これだって多分進化の過程で、「瞬時に(=だいたいでいいから)敵を見分ける能力」が優れた種が残ってきた結果だと思うのですが)、Googleの人工知能研究者がさきごろリリースした「DeepDream(閲覧注意、かなりグロテスクです)の悪夢っぷりなんかを見ると、完全にランダムなノイズだけを与えた人工神経ネットワークが作り出した画像にすぎないはずなのに、たいがいの人に「これは不気味」と呼ばせるだけの迫力と効果があります。このDeepDreamの作成画像を突き詰めるだけでも、心霊写真の怖さや生理的嫌悪感といった人が感じる「恐怖」の一端は解き明かせるかもしれません。

講演の中では警告もありました。「汎用人工知能は正しくみんなで開発、利用しないとターミネーターを生み出してしまう」。ホーキング博士やスペースXやテスラ・モーターズを率いるイーロン・マスクさんなんかが危惧していることですね。確かに人工知能に過度な期待を寄せるのは危険かもしれませんが、人間生活とうまく融合してくれれば、大量のデータを長期間覚えておくことや約束事を忘れずに知られてくれたり、あるいは人間では追いつかないフィジカルな制約(筋肉、速度、疲労、体格など)を機械的にサポートしてくれるようになる可能性を秘めているのは確信がもてました。

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