終電前、静かなエレベーターでふたりの距離

エントランスのガラスに夜が沈み、彼はネクタイを緩め、彼女はスカートの裾をそっと整える。
同僚へ交わす会釈のあいだにこぼれる息は、コーヒーとインクの匂い。
言葉は要らないのに、視線だけが丁寧に仕事を続けていた。
エレベーターの小さな箱で、揺れに合わせて肩先がかすかに触れ、離れて、また戻る。
街の灯りが縞となって流れ、心拍だけがやけに正直だ。
終電までの短い余白に、肩書きのままのふたりは、今夜の続きをそっと胸にしまう。

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紙の匂いと午後を編む、窓辺の彼女の静かな時間
風に揺れる白シャツ、花影でほどける午後のひと呼吸
白シャツの彼女、花景色と静けさを分け合う午後
白衣のデスク、青い画面に滲む静かな脈拍音
夜更け、ナースデスクに揺れる灯と息の気配
黒板とマフラー、冬の教室に灯る約束の笑み
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