剣を携える彼女と黒衣の彼、雨夜に交わす静かな約束

路地の風が錆びた看板を揺らし、彼女は鞘に収めた剣をそっと抱いた。
黒いシャツの彼は壁にもたれ、目だけで街のざわめきを測る。
言葉より先に、二人の呼吸が同じ速さを見つけていく。
刃が拾う灯りは冷たいのに、その映り込みの奥で、彼の瞳だけがやわらかい。
触れはしない距離で、互いの古い傷の輪郭をなぞるように、短い約束を交わした——今夜は、誰も斬らない。
雨の気配が近づく。
彼女は柄を軽く握り直し、彼は襟を整える。
歩き出す影は二つで一つ。
守るものはまだ名前を持たないが、夜明けまでにはきっと呼び名が生まれる。

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紙の匂いと午後を編む、窓辺の彼女の静かな時間
風に揺れる白シャツ、花影でほどける午後のひと呼吸
白シャツの彼女、花景色と静けさを分け合う午後
白衣のデスク、青い画面に滲む静かな脈拍音
夜更け、ナースデスクに揺れる灯と息の気配
黒板とマフラー、冬の教室に灯る約束の笑み
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