淡い陽だまり、ふたりの静かな輪郭をなぞる

カーテンが呼吸するたび、薄い影が壁を渡っていく。
マグの縁に残る熱が、まだ言えない言葉の温度を測るみたいで、ふたりの指先はテーブルの木目をなぞるだけ。
名前を呼ぶ声は小さく、それでも確かに、午後の光に溶けた。
沈黙は距離を作らず、輪郭をやわらかくする。
視線が触れて、すぐ離れて、また戻る。
その往復のあいだに、これからの約束が静かに芽ばえる。
窓越しの空は淡く、時間だけが丁寧に進んでいった。
やがて外の鳥が一度鳴いて、笑いがほどける。
「もう少しここにいよう」——誰が言ったのかは曖昧なまま、湯気は細く背伸びをして、同じ高さで止まった。
部屋は狭いけれど、ふたりには充分な広さだった。

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紙の匂いと午後を編む、窓辺の彼女の静かな時間
風に揺れる白シャツ、花影でほどける午後のひと呼吸
白シャツの彼女、花景色と静けさを分け合う午後
白衣のデスク、青い画面に滲む静かな脈拍音
夜更け、ナースデスクに揺れる灯と息の気配
黒板とマフラー、冬の教室に灯る約束の笑み
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