
白いシャツが街灯の下で静かに呼吸する。
彼女は掌の冷たさを確かめるように、黒い金属を軽く持ち直した。
引き金は言葉を持たないが、迷いの温度だけは正直だ。
風が襟元を撫で、遠くでネオンが滲む。
守りたいものはいつも目に見えない。
だからこそ彼女は、狙いを定めるのではなく、揺るがぬ心に照準を合わせる。
夜は深い。
だが、その白は暗さを恐れない。
引き寄せるのは引力ではなく、約束の記憶。
白い袖口が揺れるたび、彼女は自分の弱さを指先で受け止める。
撃つべきは恐怖、倒すべきは昨日の躊躇。
音より先に、静けさがこの夜を満たした。






