赤いリボンほどける秋、やわらかな午後の灯

茶の装いに赤いリボンが一滴の果実のように映え、窓辺の光をこぼす。
カップの縁をなぞる指先は、まだ語られない物語の栞。
息をひそめる午後、柔らかな布地が静けさを撫でる。
彼女は微笑み、結び目をそっと確かめる。
ほどけるか、結び直すか。
心の抑揚だけが、リボンを揺らす風になる。
甘く乾いたココアの香りが、時間の端をやさしく丸めた。
見上げた先に、秋の雲が遅く流れる。
茶色の影と赤のひかりが重なって、今日だけの色になる。
名を呼ばなくても、視線は合い、約束は静かに胸に置かれた。

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紙の匂いと午後を編む、窓辺の彼女の静かな時間
風に揺れる白シャツ、花影でほどける午後のひと呼吸
白シャツの彼女、花景色と静けさを分け合う午後
白衣のデスク、青い画面に滲む静かな脈拍音
夜更け、ナースデスクに揺れる灯と息の気配
黒板とマフラー、冬の教室に灯る約束の笑み
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