ネクタイとスカート、鍵のかかった黄昏の鼓動

退勤間際、締め直したネクタイが静かに胸元で呼吸する。
膝までのスカートが、椅子の影に小さく波を作る。
蛍光灯の白が、指先の紙の端を淡く染めた。
窓の向こう、街はオレンジ色にかすみ、時計の針が音をやめる。
彼女は深く息を吸い、結び目をそっと緩める。
その仕草だけで、部屋の温度がひとつ変わった気がした。
言葉は少ない。
けれど視線は、折り目のついた襟と布の落ちる線をたどり、まだ名のない期待を撫でていく。
明かりはひとつずつ消え、残った微熱だけが夜を照らした。

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