塩気を纏うランジェリー、頬を染める宵の香り

ローズカラーのランジェリーが照明に淡く溶け、テーブルに眠る生ハムの艶が、夜の湿度を映す。
指先が縁をなぞれば、塩の結晶が小さく音を立て、時間が熟す気配だけが呼吸になる。
彼女は急がない。
布と肉の間に漂う燻香を、まぶたの裏でゆっくりほどく。
唇に触れる前の距離、そのための微笑み。
光は肩をすべり、影は脚の曲線を長くする。
欲望というより、確かめる儀式。
口に運ぶのは物語の一片で、残りは肌の温度に預ける。
夜更け、皿の上と胸の内に、同じ余韻だけが静かに残った。

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