ランタンの灯に溶ける、テントの小さな鼓動
テントの布が微かに鳴り、薄灯のランタンが彼女の輪郭をやさしく縁どる。
簡素なベッドに腰を下ろし、ほどけた髪を指でまとめる仕草だけで、夜は静かに深まっていく。
外では虫の歌、遠くに焚き火の残り香。
汗ばむ掌に触れるシーツはひんやりとして、都会に置き忘れた時間がここに戻る。
彼女は小さく息を弾ませ、私の名を確かめる。
風が幕を揺らすたび、星明かりが差し、ふたりの影は寄り添った。
ことばより遅い鼓動が、地図を描くように夜をなぞる。
明け方、天幕の天井に新しい一日が滲むまで。