青髪が揺れる、やわらかな午後と街の息づかい

風の色を連れて歩くひとがいる。
つば広の帽子の影から覗く青は、空よりも静かで、波よりも深い。
彼女は角を曲がるたび、街の匂いを少しだけ染め替える。
信号が変わる音、靴音、誰かのため息。
全部が柔らかな布のように彼女の髪に触れ、ほどけていく。
名前を知らなくても、季節の端に立ち止まるたび、その色を思い出す。
言葉より先に胸に落ちる青。
帽子の縁が揺れて、目が合う。
世界が一拍遅れて、やさしくなる。
その静けさが、今日を少しだけ救ってくれる。

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