黒のワンピース、静かな店でそっと時間をほどく

彼女は黒のワンピースを整え、棚に並ぶ灯りの粒をひとつずつたどる。
ショーウィンドウの向こうで、夜が薄く呼吸し、反射したガラスに小さな波紋だけを残す。
紙と革の匂いが、忘れていた会話の続きをそっと開く。
店員の気配が遠のくと、時間は糸のように緩み、袖口から静けさが落ちていく。
買い物袋は空のまま、心だけが少し満ちて、また歩き出す準備をはじめる。
灯りはまだ、彼女の影をやさしく抱いていた。

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