月明かり、襟足に落ちる静かな鼓動の路地で 薄い灯の下、絹がそっと鳴る。藍の着物に指先を沈め、彼女は襟を整える。結び目の影からのぞくうなじに、夜風が触れて小さな鳥肌が立つ。花の香の残る路地、足音は雨粒のように静かに続いた。言葉は要らない、と視線が告げる。袖口の奥にしまい込んだため息が、呼吸とともにほどけてゆく。障子の白さが、まだ見ぬ朝を予感させるのに、今はただ、結われた帯の鼓動だけが確かだった。月が雲から顔を出す。光が彼女の輪郭を淡く縁取り、私の世界は一枚の布のようにしずかに畳まれていく。 #和服・浴衣#和風#夜景#大人の女性#清楚#着物#艶やか#黒髪