
白いシャツに朝の光が薄く透け、ブラウンのスラックスが花壇の土色と静かに響き合う。
彼女は一歩だけ前へ、胸の奥で呼吸を整える。
風が花の名を順に撫で、袖口でほどけた気配が、今日という頁をめくった。
立ち止まる時間は、写真のための静けさではなく、心の散策路を確かめる小さな儀式。
花弁の陰で微笑む視線は、まだ言葉にならない約束を抱き、遠くの鈴のような音へ耳を澄ます。
白の清さと土の温度、そのあいだにある体温が、午後のひと呼吸をやさしく刻む。
歩き出す前のささやかな逡巡だけが、季節の縁をすくい取り、彼女の背に淡い香りを残した。






