花房の前で、静かに揺れるレースのランジェリー

花の匂いが淡く流れる。
薄いレースの縁が、彼女の動きに合わせて小さく波打つ。
光は花弁と肌の間で行き先を迷い、部屋に静かな体温だけが増えていく。
立ち止まったまま、彼女は花に耳を傾けるように肩をすべらせ、視線をほどく。
触れない距離にあるやさしさが、かえって確かな輪郭を与える。
息が少し長くなり、時間が柔らかく折りたたまれる。
それは誇示ではなく、寄り添い。
布と花の間に生まれた余白が、名前のない想いをひそやかに育てる。
誰にも急かされない午後、ランジェリーは香りの一部になった。