ロッカー室で息を揃える、水音と静けさの狭間

ロッカー室の静けさに、塩素の匂いがかすかに溶ける。
大人の彼女は、水面の余韻を肩にまとい、濡れた紐を指先で確かめた。
秒針のように、雫が床へ落ちる。
曇り気味の鏡が、呼吸に合わせて輪郭を返す。
蛍光灯の微かな唸り、タイルの冷たさ、心拍のテンポ。
泳ぎ終えた身体は張りを保ち、静かな熱だけを放っている。
レーンの線はまだ瞼の内側で揺れ、彼女は髪を束ね直す。
扉の向こうに続く夜を思い、背筋を伸ばす。
小さな水音が合図のように響き、次の一歩がそっと決まる。

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