青いワンピース、書棚に揺れる午後のひと呼吸

棚の前で、青い布がゆっくり呼吸する。
背表紙の列に触れるたび、紙の匂いがほどけ、午後の光が指先へ移っていく。
彼女は選ばない。
選ばないという選択を、静かに試している。
少し浮いた埃が、ひとつの季節の記憶を撫でていく。
まだ言葉にならない気持ちが、青の陰影として揺れた。
棚の奥にあるのは本ではなく、今日という日を落ち着かせるための重さだと、彼女は知っている。
やがて、指先はひとつの背にとどまる。
名も知らない背表紙の手ざわりが、今日の呼吸と重なり、微かな決心になる。
青いワンピースは光を受けて、静けさだけを照らしていた。

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