NECのPC9800シリーズがぶいぶい言わせていた1980年代からのIT小物大好き筆者なので、家電やPC、スマホなど「何買えばいいの?」と相談されることがあります。
ただ、筆者の得意分野には偏りと限界があり、要望に答えられそうな時だけベスト・バイを相談者と一緒に模索します。よく話を聞いてみると、筆者が評価している機能と相談者が求めている機能がシンクロしていないことも多く、なるべく「ごり押し」にならないように気を付けています。
この手の相談を突き詰めていくと、実は性能や機能面がどうのというよりも、周りから「いい買い物をしたね!」と言ってもらえるかどうかの気持ちの問題なのかと感じています。みんな満足度の高い買い物をしたいので当然といえば当然ですが…。
飽和しようとしている?
先だっては盛岡に住む従妹から「iPhoneって何買えばいいの?」という相談を持ちかけられました。
筆者は根っからのWindows派でAppleのことはよく知りません。でもiPhoneは有名ですし、「4S」や「5」だぐらいのラインナップは知っていますので機種のことを言ってるかと思ったのですが、従妹は「SonyとSamsung、どっちのiPhoneが使いやすいかなー?」というので、相談の答えを大きく軌道修正して、ひとつひとつ丁寧に説明しておきました(結果、iPhone5を買ったようですが)。
ちょっと携帯電話やスマホを知っている人であれば、従妹の話は「出直しておいで」となるのでしょうが、今までまったく関心が無かった人たちにとっては、分からないことだらけなのですから仕方のないこと。たとえば男である自分が化粧品や女性用下着を買わなきゃない場面などを想像してみて、しどろもどろになるのが目に浮かぶので、この手のニューカマーさんに対する相談の時こそ、ゆっくり丁寧に説明することを心掛けるようにしています。
ただ、ニューカマーの相談が増えてくるような状況になると、商品の普及度合いとしては「そろそろ飽和が近付いているのかな」とも感じます。それこそ1980年代からのマイコン、パソコン、家電、ゲーム機、携帯電話などの流れを見ても、およそ市場のサイクルはありきたりではありますが、以下のように法則性を見いだすことができます。
- 独創的・斬新的な新商品が登場する
- マニアたちが買い始める
- インフラが充実してくる
- 類似品、廉価版がぞろぞろ出てくる
- モデルチェンジ、リニューアルでしのぐ。発想が「?」な商品が現れる
- みんなから飽きられ淘汰 OR 生活にがっちり食い込む
- また独創的・斬新的な商品が登場する
真価と進化が問われる正念場
今回、従妹の相談がきっかけになった「何買えば?」のテーマはスマホですが、上の流れでみると、スマホは「4」「5」の段階辺りでしょうか?
テレビなんかは地デジは国を挙げた脅迫的手法でなんとか上手くいきましたが「3D」から「4K」「8K」の流れはどれほど需要があるというのか、「6」の段階の生き残りへははなはだ危うさが漂います。ルンバが切り開いた「お掃除ロボット」ジャンルも今や似たようなのがたくさんあって、まさに正念場という感じですね。
こうした視点に立って、デジモノ30年の流れを振り返ってみると、「マニアや今で言う情強(情報強者)のみなさんがイチオシだったハイクオリティ商品が必ずしも売れて生き残っているわけでもない」ということも少なくなく、逆に彼らが「素人」「情弱」と侮っていた方々によって市場が形成されていくことも多いように思えます。
その市場が形成されていく過渡期でバロメーターのひとつとなるのが「●●って何買えばいいの」という相談なのかもしれません。要はこうした相談をされたり、書店でハウツー本が並んだり、ネットで商品名と「購入」「おすすめ」「比較」などのワードが検索ランクがあがったりして、いわゆる「ブーム」が形作られていくわけですが、その段階というのは、実は商品市場としてはいよいよ円熟期に達せんとしており、真価と進化が問われる正念場が近付いている時期ということなのかなと感じています。
まとめ
第35代アメリカ大統領ジョン・F・ケネディ(JFK)のジョセフ・P・ケネディはウォール街の相場師として名をはせた人物ですが、彼は1929年のウォール街大暴落の直前に手持ちの株を売り払っており、ほとんど被害を受けなかったそうです。
なぜ彼が暴落を予測し、株を売っていたか。その理由に彼は「路上で靴磨きをしている男までが株に詳しい。もう株は危ないと思った」と答えたという伝説が残っています。実際には作り話のようですが、これが真実としてまかり通るだけの説得力を持って今も語りぐさになっているというのは、市場と人々の動きを的確に言い当てているからなのだと思います。
折しも日本経済はアベノミクスで「株」「円」「国債」と金融市場が色めき立っており、思わず「株って何買えばいいの?」と証券会社に尋ねそうになる自分がいて「あれ?ひょっとして?」思っています。