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USJ「ハリー・ポッター」に嫌な胸騒ぎが止まらない

2014年7月15日、大阪のUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)に新しいテーマエリア「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」がオープンしました。メディアでも大騒ぎになり、今夏は大盛況だったようですが、筆者は胸騒ぎが止まりません。

既に閉じられた世界なのでは

一番の懸念はUSJ史上過去最大といわれる450億円にも及ぶ投資額。関西大大学院の宮本勝浩教授は経済効果を10年で5兆6000億円と試算しているようですが、果たして投資額を回収して、この先10年もハリポタで収益を上げ続けられるのか、考えるとざわざわしてきます。

ひとつには新規顧客をどれだけ獲得できるのか読みづらい点が挙げられます。ハリー・ポッターシリーズは作家J・K・ローリングさんが1997年に1巻「賢者の石」を刊行してから、最終巻「死の秘宝」(2007年)まで計7巻が出版された世界的ベストセラーです。幅広い年代層に支持され、老若男女を問わず熱烈なファンが多いのも特徴です。

ですが、既に物語は完結しており、映画も2011年に「死の秘宝Part2」で終わっています。つまるところ「既に閉じられた世界」です。わきあいあいとマニアたちが集う「閉じられた世界」の扉を開け放ち、新しいお客(特に子ども)をどんどん引き込んでいくのは相当な戦略が必要で、なかなかに難儀ではないのかと思います。今後スピンオフも順次予定されているようですが、どの程度のストリームを巻き起こせるかは未知数です。

時間が経過するのは諸刃の剣!?

もう1点はハリ・ポッターが成長の物語であるという点です。元々のJ・K・ローリングさんの構想では、1作で1年ずつ歳を取っていく設定で、ハリーやハーマイオニー、ロン、マルフォイたちが子どもから大人へと一歩一歩大きくなっていくのが頼もしく、非常に大きな魅力でもありました。

とはいえ、成長するということは時間の概念が物語に持ち込まれることになり、物語の世界が年表の一部としてピンを打たれ固定されてしまう状況が生まれます。

これはハリー・ポッターが、単なる魔法世界のおとぎ話とならずにある程度のリアリティをまとって説得力を増させるというJ・K・ローリングさん流の作戦であり、さすがと脱帽したくなりますが、話が小説から派生してくる映像やアトラクションといったビジネスの話になってくるといろいろ難しくなります。

photo credit: AlicePopkorn via photopin cc

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仮にハリ・ポッターが成長のワンシーンだけを断片的に切り取った物語であれば、物語以外の部分でいろいろな仕掛けも可能だったかもしれません。もちろんそうしたプロットはJ・K・ローリングさんの意に沿わないでしょうし、ハリー・ポッターがここまでの人気にもならなかったでしょう。ですが、逆に極めて完成度の高い年表(時間)を持ち込んでしまったことにより、ハリーたちは永遠の命を持ち損ねたのではないか、というのが筆者の考えでもあります。

日本のアニメを中心として主人公たちが、歳を取らないという「サザエさん時空」あるいは「サザエさん方式」という作品づくりの手法があります。この手法の賛否は別として、サザエさん方式であれば、永遠の命を得た主人公たちは常に「閉ざされない世界」の住人となます。

視聴者はまず子どもの頃見始めて、そのまま少年少女になり、そして大人になっても見る流れが出来上がり、そして、その大人から生まれた子どもたちががまた見始めるというループが発生して新しい顧客が供給されていきます。

USJのライバルというと語弊があるのかもしれませんが、ディズニーの世界はまさにそうした「断片的おとぎ話」や「閉じられない世界」の住人を扱った作品が多く、人生のワンシーンだけをフィーチャーして、がっちがちの世界観を構築するようなことはなく、子どもたちをターゲットにしながら、かつて子どもだった人でも楽しめるように、ショートフィルムやスピンオフ、後日談などを効果的に展開して、巧みにビジネスを組み込んだ「夢の世界」を作り上げています。

筆者はハリー・ポッター大好きです。小説も読んでいますし、映画も一通りみています。だからこそ、あの練りに練り込まれた世界観を商業ベースで巨額投資でアトラクション化していくUSJに大丈夫かなとも胸騒ぎを覚えてしまいます。

ポッター役のダニエル・ラドクリフを始め出演者たちも立派な大人となり、もはやあの素敵な子役たちを演じることはもはや不可能になってしましました。ありえないことですが、もしハリー・ポッターがアニメで制作され、「閉じられない世界」の住人であったなら、どんな展開になっていただろうなと妄想してしまいます。ですが、やっぱり、それでは安易すぎて、ここまでの成功には結びつかなかったでしょう。

USJのアトラクションが今後どうなっていくかは分かりません。ただ、アトラクションとしてのハリー・ポッターは、アナと雪の女王や、ミッキーマウス、ドラえもんたちと闘うにはちょっと部が悪いのかなと思います。

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